雄猫の去勢手術の時期
早くに去勢してしまうと、その時点で尿道の成長が止まり、細く詰まりやすくなり、
将来、尿路疾患のリスクが高まる??
先日、保護子猫の去勢避妊手術に関わった中で耳にした一説である。
ならば、月齢5ヶ月体重約3kg、現在の体重の約半分の時に手術を受けたうちのテラは、細くて詰まりやすい尿道になってしまったの?
体の成長を待ってからの手術となると、一歳くらいまでは待った方が良いってこと?
一歳までのうちに発情してしまう可能性があるのでは?
完全室内飼育だろうと、発情を迎えた雌に自宅周辺を歩かれたら危なくない?
脱走のリスクがあるのでは?
いろいろと疑問がわいたので、去勢手術の時期について改めて調べてみた。
その結果、冒頭の一説は間違いだとわかった。
猫の飼育本などを見てみると、適切な去勢手術の時期は、日本では、
「生後6ヶ月くらい」というのが一般的に広く知られている。
しかしアメリカでは、「生後3ヶ月くらい」のかなり早期の手術が一般的らしい。
この違いを調べているうちに、冒頭の一説にも言及している文献を見つけた。
Early Age Spay and Neuter in the Cat ー猫における幼齢での避妊手術・去勢手術ー
Susan Little DVM, Diplomate ABVP (Feline Practice)
(PDFファイル 4ページ目に手術画像あり 閲覧注意)
この中に以下のことが述べられている。
・「早期の去勢が下部尿路疾患の要因となる」というのは、時代遅れの研究(1977年)による誤解である。
・現在、雄猫の下部尿路疾患に去勢は関係ないことが、臨床実験で科学的に証明されている。
・去勢手術を受けた時期が、生後7週でも7ヶ月でも未去勢でも、成長後の尿道の直径に差はない。
・早期に不妊手術を済ませ、飼い主へ譲渡された後の不要な繁殖を防ぐ。
その他、参考になったページ
不妊手術の時期/猫の去勢と避妊 ←猫の不妊手術について 全9ページ
猫の去勢の時期について/OKWave ←質問サイト 同様の質問複数あり
かつて、雌猫の避妊手術は一度出産を経験させてからがよい、とされ、実際そうしていた獣医師もいた。まったくの迷信がまかり通っていた。
なぜそうなったのか、私の勝手な想像だが、昔は手術技術が発展途上で幼齢での手術は事故のリスクが高く、獣医師たちが避けたのではないか。(注:あくまで想像です)
早期の手術に問題がないと言っても、猫が手術に耐えられる健康体であることが大前提だ。麻酔のリスクだって忘れてはならない。事前に十分な検査が必要である。
早期に去勢しても尿道の成長に影響がないと明らかになったのは1996年。
それからしばらくになるが、まだ日本ではその研究結果が浸透していないようだ。
時が経てばまた新しい事実が出てくるかも知れない。
ともかく、最新の研究に敏感な獣医師にかかりたいものだと思った。
今日のテラさん
日中、晴れれば陽が当たってガラスが曇ることはないのだけれど、あいにく今日は天気が良くないので完全に曇ってほとんど景色が見えないのにもかかわらず、日課である外界の監視は怠らないテラさん。