とある動物病院で
大大大嫌いな病院に連れて行くときは、このキャリーバッグを使っている。
それでも、キャリーバッグ=病院、とはなってないようで、この中に入るのは好き。
実際に病院に行くときも自ら入ってくれるので、飼い主としては大助かり。
テラさんが子猫の時に行っていた病院は、初めて猫を飼う者にははっきり言って不親切な病院だった。
今振り返ると、とにかく何に関しても説明不足。こちらから質問しなければならなかった。私にとってテラさんは、自分で初めて全責任を負って飼う動物になる。当然、動物病院にも慣れていなかった。
当時のことを記したノートを見ながらここに書く。
小さなテラさんを我が家に迎えて、健康診断のためにその病院へ連れて行った。
健康状態は問題なし。獣医師に訊かれたことで覚えているのは、外に出すか?ということ。完全室内飼いだと答えた。
その日は、最初のワクチンの日を伝えられて帰った。
最初のワクチン接種当日。
事前にワクチンについての説明はなく、あれよという間に接種終了。午前11時のことだった。
お会計の時に、受付の人が接種後の注意をしてきた。まれに重い副作用で、顔が腫れたり、けいれんが起こることがあり、その時はすぐに連れて来るようにと言われた。お会計後すぐに帰された。
帰宅ししばらくして、テラさんが明らかに元気がないことに気づいた。
うずくまったままじっとしている。私は愚かにも、それまで漠然とウチの猫は大丈夫だろうと思っていた。
その苦しそうな姿を見て初めて、猫のワクチンについて詳しく調べ始めた。
調べるほどに怖くなった。
最も恐ろしい副作用は、接種後数分から30分くらいまでに起こるアナフィラキシーショックである。呼吸困難、けいれんなどのショック症状が出る。早急に注射や点滴が必要であり、処置が遅れれば死んでしまう。
私はテラさんの様子を観察し、重篤な副作用でないことを確認した。
元気がなくなるのは、よくある軽い副作用だった。
結局その日は19時まで飲まず食わずだったが、夜遅くには完全に復活してくれた。
子猫のワクチン接種は、母体免疫の関係から、一ヶ月後の再接種が必要になる。
再びその病院に行った。
前回の接種後の様子を伝えたが、その程度なら大丈夫ということで、同じワクチンを打つことになった。今まさに打とうとしている注射器を目の前に、私から訊いた。
これは3種混合ワクチンですよね、と。(→ワクチンの種類については前記事参照)
獣医師は、ウチでは7種を使っている、と言った。
7種混合ワクチンは、現在発売されている混合ワクチンの中で最も混合数が多い物だと思う。混合数が多いほど副作用が出やすいことは、前回の接種後に調べて知った。
どおりでグッタリしたわけだ、お会計が高めだったわけだ、と思った。
外を出歩く猫さんには、より多くの感染症を予防できる5種や7種の混合ワクチンを勧めることはある。完全室内飼いの猫には、最低限の3種で十分という意見が多い。
獣医師の答えを聞くまで、3種を打ったとばかり思っていた。
ワクチンに対する考え方は医師によって異なる。
しかしなぜそれを事前に説明してくれないのか。
こういう考えでウチでは7種を使っているんだと説明があれば、納得して受けたかも知れないし、または、3種にしてほしいと言えたかも知れない。
二度目の接種を終え、やはりすぐに帰された。
その時はもう知っていた。万が一のショック症状が出た時に備えて、30分は院内で待機させる病院があること。
何度も猫の様子を見ながらゆっくり帰った。
副作用は2度目の方が酷かった。
前回なら復活していた接種当日の夜遅く、二度の嘔吐があった。食べていないので何が出るわけでもない。やっと物を口にしてくれたのは、翌日の夕方だった。
その間30時間、恐ろしかった。
重い副作用には、急激なショック症状の他にも、数時間後に顔が腫れあがるなどのアレルギー反応が起こることもある。
幸いテラさんは大丈夫だったが、そういった副作用の経験をした飼い主さんの恐怖はいかばかりか。
今考えると、ワクチンを終えた時点で病院を変えればよかった。
その病院には、去勢手術のために再び訪れることになる。
その時、悪い意味で印象的なことがあった。
(続く…)